1.就労移行支援とは

毎日を生きていくなかで、今も昔もさまざまなストレスが存在します。現代人は多くのストレスを抱えており、うつ病や統合失調症などを患う方も少なくありません。

それらがきっかけで退職したり、次の就職が決まらなかったりして困ってしまうこともあります。また、新たにお仕事を探すにしても、「病状が再発したらどうしよう」という不安もあるでしょう。

そんなお悩みをお持ちの方へ、「生活面や精神面での安定を図り、心と体を整えてから次の就職をサポート」するのが就労移行支援です。

この記事では、元就労移行支援事業所で生活支援員として働いていた私が解説していきます。

ちなみに、就労移行支援とは障害者総合支援法に定められた福祉サービス。障がいなどによって就労に困難を抱えている方を対象に、原則2年間の期間を使って一般就労に向けて訓練を行います。

訓練内容は施設によってさまざまですが、共通しているのはビジネスマナー講座やコミュニケーション術、基礎的なパソコン操作などが多いです。ほとんどの施設で体験利用可能な場合が多いので、実際に見学などをして自分に合った施設を探してみることをお勧めします。

また、利用料金はほとんどの方が無料で利用していますが、前年度の所得によって自己負担が発生する場合もあります。詳しくはお住まいの障害福祉サービスの窓口で問い合わせておくと安心です。

 

2.どんな人が通えるの?

就労移行支援の利用は、以下の条件を満たした方が対象となります。

・原則18歳以上65歳未満の方
・精神障害、発達障害、知的障害、身体障害、難病のある方
・一般企業への就職を希望されている方

こちらも前もってお住まいの障害福祉サービス、もしくは利用を検討している就労移行支援事業所に問い合わせておくとよいでしょう。

ちなみに私が支援員をしていた施設では、18歳から40代後半まで幅広い年齢層の利用者さんが通所していました。それぞれ年齢は違っても、みんなが「一般就労を目指す」という目的をもって通所しています。

そのため、施設内は気さくに話しやすい雰囲気で、ほとんどの方が仲のよいお友達を作っていました。

3.通所するメリット1

私が支援員として利用者さんと接した印象ですが、うつ病や統合失調症に罹患すると極端に身だしなみに関心がなくなってしまう方が一定数います。就職活動をするうえで清潔感はとても大切なため、ビジネスマナーも含めて支援いたします。

ほかにも最近ではスマホゲームに没頭して、昼夜逆転している利用者さんもかなり多かったです。この先、遅刻や無断欠勤なく働き続けるには、安定した生活リズムが欠かせません。

就労移行支援では利用者さんが無理なく実践できるよう、さまざま工夫を凝らした講座を行っています。ほかの利用者さんと一緒に楽しみながら学んでみましょう。

4.通所するメリット2

「施設に通所する前は、ずっと家にこもっていました」という利用者さんも多いです。施設には自分の意志で通所を始める人もいれば、ご家族に勧められて渋々通所を始める方もいらっしゃいます。

初めての通所時はみなさん緊張のためか表情は硬く、ほかの利用者さんとの会話もほとんどありません。

しかし、ある程度通い続けるうちに、ほかの利用者さんと仲良くなってよく笑うようになります。

こうして人や社会とのつながりを構築できるのも、就労移行支援のメリット。支援員としても利用者さんがいきいきと活動できるように変化していくのは、とてもうれしいものです。

5.通所するメリット3

支援員としてうつ病や統合失調症のほか、発達・知的障がいのある方とも接してきました。そして、ほぼ全員が何かしら輝く能力を持っていることに驚かされます。

施設では一般的なビジネスマナーやパソコン講座のほかに、利用者さんに楽しんでいただけるよう定期的にレクリエーションを行ったりします。

そんなとき、支援員よりも利用者さんのほうが斬新なアイデアや気づきを生み出すことが多いのです。

ほかにも音楽や英語、美術などのレクリエーションでその才能を存分に発揮する方や、カメラを持たせると私たちが思いつかないような視点で素晴らしい写真を撮る方などいろいろです。

あなたもきっと「すごいもの」を持っているかもしれません。支援員はその才能を引き出すお手伝いもいたします。

6.支援員だった私が印象に残っている利用者さん

私が印象的だった男性で発達障がいがある利用者さんがいます。彼は明るくとても気遣い上手。誰にでも優しく接して、施設内でもみんなから好かれていました。

また、自作パソコンを持っているほどのパソコン好きで、常に最新のテクノロジー技術も追いかけています。そんな彼ですが苦手なことがあります。それは手書きを用いた事務作業。

彼は責任感も強く、手書きの事務作業も「絶対にミスは許されない! そして、丁寧に仕上げなければ!」と受け止めてしまうタイプ。

そこまでのクオリティが必要ない作業でさえ、定規を使ってきっちりと線を引き、とてもゆっくりだけど一文字一文字ワープロのような美しい文字を書くのです。

ただ、そんなやり方なので与えられた事務作業を時間内に終わらせることができません。

しかし、パソコンで行う事務作業を与えると、彼はほかの仲間を圧倒するスピードと正確さでいつも1番に完成させるのです。この辺りの特性という表現が適切なのか難しいところですが、発達障がいの方は「得意と苦手が極端」なケースも多いものです。

そこで私たち支援員は、彼の得意なパソコン作業スキルを伸ばす方向で支援を行い、見事に彼は自分から希望していたパソコン作業を中心とした会社に就職することができました。

みなさんも彼のように、なにか飛び抜けた能力を持っているかもしれません。その能力を、就労移行支援という場所で開花させてみませんか?

7.就職後の定着支援

めでたく施設を通じて就職できた場合、ほとんどの施設で「定着支援」というものを行っています。これはあなたが安心して長く働き続けられるように、施設の職員がサポートするものです。

具体的には定期的に面談を行って、「生活面での課題はないか」「仕事でミスが多く困っている」などの悩みがないかを聞いたりします。
ほかにも「同僚とうまくコミュニケーションがとれない」とか、「苦手な上司がいる」というのもよくある相談です。

ちなみに私が支援員を行っていた際は、「自分の能力以上の仕事を割り振られて、パニックになりそう」という相談を受けたことがあります。この場合は支援員である私がその就職先の上司とやり取りを行い、仕事量の調整を行うなど対応します。

また、「やっと就職できたけど、やってみたら仕事が自分に合わなくてつらい」というケースもありました。このような場合も「今の環境の中で工夫できることはないか」を一緒に考えます。また、場合によっては転職も視野に入れるなどしてサポートしていきます。

そして、就労移行支援を2年間利用したけど、残念ながら精神や体調面で就職ができなかったら…
そのような場合は、就労継続支援A型・B型など新たな訓練場所を検討することもあります。また、地域の第三者機関と連携をとり、利用者さんが再び孤立することのないように支援します。

8.最後に

最後にひとつ大切なことを話します。それは、「就労移行支援施設を長く居続ける居場所にしない」こと。「せっかく安心できる場所ができたのに、なぜそんなことを言うの?」と思うかもしれません。

しかし、みなさんの最終目標は、生活リズムを整えて一般就労を目指すことです。

しばらく通所を続けていると、仲良しの利用者さんができるでしょう。支援員もあなたの悩みを親身になって聞いてくれるでしょう。

施設によっては季節のイベントなども定期的に開かれ、楽しくて施設を卒業するのが寂しく感じてしまうかもしれません。そんなこともあり、利用者さんの中には当初の就労という目的を忘れ、施設に通所することだけが目的になってしまう方も少なからずいました。

就労移行支援を利用できる期間は原則2年間です。
あなたの今後の人生をより良いものとするために、この期間は目的をもって大切に過ごしてほしいと思います。

多くの就労移行支援事業所は、卒業後も交流会を開くなど「その後のつながり」を大切にしているところが多いです。だから、安心して就職という目標に向かって進んでいきましょう。

あなたが今の人生で失敗したと思っていることがあっても、つらいと思うことがあっても、いつでもやり直すことができます。

就労移行支援事業所には助けてくれる支援員のほか、同じ悩みを抱える仲間もたくさんいます。
今後の人生で選択肢を大きく広げるために、一歩踏み出してみませんか?